はじめに
糖尿病の治療で最も重要なのが「食事」です。
しかし、「糖質を完全に抜く」「好きな物が食べられない」と感じてしまうと、長続きしません。
そこで注目されているのが、ロカボ(ゆるやかな糖質制限)です。
ロカボとは、極端に糖質を制限するのではなく、1食あたり20〜40g程度の糖質に抑えて血糖上昇を穏やかにする考え方。
「我慢する食事」ではなく「上手に食べる食事」が特徴です。
この記事では、糖尿病におけるロカボ食の基本と、実践のコツを詳しく紹介します。
1. なぜ糖質が血糖を上げるのか
食事で摂取する糖質(炭水化物の一部)は、消化吸収されて血糖値を上げます。
糖尿病ではインスリンの分泌や作用が弱まっているため、糖質を摂りすぎると血糖値が急上昇します。
血糖が急上昇すると:
- インスリン分泌が追いつかない
- 血管にダメージが蓄積する
- 空腹時に血糖が下がりにくくなる
糖質を適量にコントロールすることは、血糖管理の第一歩です。
2. ロカボ食の基本ルール
日本ロカボ協会では、次のような糖質摂取量が推奨されています。
- 1食あたり糖質20〜40g
- 1日合計70〜130g程度
- ご飯なら 小盛(100g)=約36gの糖質 が目安
完全な糖質カットではないため、ご飯・パンも少量ならOKです。
無理なく続けやすいのが最大のメリットです。
3. 糖尿病で「控えたい」食べ物
以下の食品は、血糖を急激に上げやすいため注意が必要です。
(1) 主食の摂りすぎ
- 白米、食パン、うどん、ラーメン、パスタなど
炭水化物が多く、消化が速いものほど血糖値が急上昇します。
(2) 甘い飲み物
- 清涼飲料水、缶コーヒー、フルーツジュース
体の糖質は吸収が早く、特に危険です。
(3) スイーツ・お菓子
- ケーキ、クッキー、アイスクリーム、和菓子
砂糖・小麦粉・脂質の組み合わせは血糖上昇+中性脂肪増加を招きます。
4. 積極的に摂りたい食品
(1) たんぱく質(主菜)
- 魚、肉、卵、大豆製品
糖質を含まず、満腹感が持続します。魚のEPA・DHAは血管保護にも有効。
(2) 食物繊維(副菜)
- 野菜、海藻、きのこ、豆類
糖質の吸収を緩やかにし、食後高血糖を防ぎます。
(3) 良質な脂質
- オリーブオイル、アーモンド、くるみ、青魚
不飽和脂肪酸がインスリン感受性を改善。
(4) 発酵食品
- 納豆、ヨーグルト、味噌汁
腸内環境を整え、血糖・脂質代謝をサポート。
5. ロカボ食を実践するコツ
(1) 食べる順番を意識する
「野菜 → タンパク質 → 主食」の順に食べると、血糖上昇が穏やかになります。
(2) 主食を置き換える
- 白米 → 雑穀米/もち麦ご飯
- パスタ → 低糖質麺(こんにゃく麺など)
- パン → 大豆粉・ふすまパン
(3) 夜の糖質を控える
夜はエネルギー消費が少ないため、夕食の主食量を半分にするのが効果的。
(4) 「ロカボスイーツ」を活用
糖アルコール(エリスリトールなど)を使ったスイーツなら、血糖上昇を抑えられます。
6. 医師がすすめる“ゆるやか制限”
極端な糖質制限(糖質0g近く)は、筋肉量の低下や便秘、ケトーシスなどのリスクがあります。
ロカボは「ゆるやかに制限」することで、栄養バランスを崩さず、続けやすい方法です。
7. 池尻大橋せらクリニックでのサポート
当院では、糖尿病・MASLD(脂肪肝)・脂質異常症・高血圧など生活習慣病を横断的に管理しています。
- 血糖・HbA1c・脂質・肝機能を総合的にチェック
- 栄養指導で「禁止ではなく置き換え」を提案
- メディカルダイエット・運動療法を組み合わせ、血糖コントロールと体重管理を両立
まとめ
- ロカボは「糖質を減らしつつ、バランスを保つ」食事法。
- 主食・甘味料を上手に選び、野菜やたんぱく質をしっかり摂る。
- 糖質制限はゆるやかに、継続可能な範囲で行うことが大切。
- 池尻大橋せらクリニックでは、ロカボを含めた総合的な食事・運動支援を行っています。
参考文献
- 日本糖尿病学会. 『糖尿病診療ガイド2024-2025』
- 日本ロカボ協会. 「ロカボの定義と基準」
- Evert AB, et al. Nutrition therapy for adults with diabetes. Diabetes Care. 2019.
- Jenkins DJ, et al. Glycemic index and metabolic control. Am J Clin Nutr. 2018.
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