はじめに
糖尿病は、初期のうちは自覚症状がほとんどありません。多くの人は「健康診断で血糖値が高いと言われた」「HbA1cが少し上がっている」といったきっかけで見つかります。
しかし、糖尿病は血糖値だけを見ればよい病気ではありません。診断や治療方針を決めるためには、血液検査・尿検査・合併症を調べる画像検査などを総合的に組み合わせることが大切です。
この記事では、糖尿病の代表的な検査内容と、その意味・受けるタイミングについて詳しく解説します。
1. 糖尿病の基本検査(血液検査)
(1) 空腹時血糖値(FPG)
- 8時間以上食事をとらずに測定した血糖値
- 126mg/dL以上で糖尿病が強く疑われます
血糖値は日によって変動するため、1回の値だけでは判断が難しいこともあります。再検査やHbA1cの併用が重要です。
(2) 随時血糖値
- 食後や日中いつでも測れる簡便な検査
- 200mg/dL以上+症状ありで糖尿病と診断可能
健診や外来で「その場で確認」できるため、早期発見のきっかけとなります。
(3) HbA1c(ヘモグロビンA1c)
- 過去1〜2か月の平均血糖を反映する指標
- 6.5%以上で糖尿病型と判定
- 貧血や腎障害などで誤差が出ることもあり、他の血糖値と併せて判断します
HbA1cは日内変動の影響を受けないため、糖尿病の診断・経過観察に不可欠です。
(4) OGTT(経口ブドウ糖負荷試験)
- ブドウ糖(75g)を飲んでから2時間後の血糖を測定
- 2時間後血糖200mg/dL以上で糖尿病型
食後高血糖が疑われる場合や、境界型(予備群)の確認に有用です。
2. 尿検査 ― 尿糖・尿タンパクで合併症を早期発見
糖尿病では血糖が高くなると、尿に糖が漏れ出すようになります。
(1) 尿糖
- 尿中に糖が出ていれば要注意
- 食後やストレス時にも出ることがあり、血液検査と合わせて確認が必要
(2) 尿アルブミン・尿タンパク
- 腎臓の障害を早期に検出するための指標
- 微量アルブミン尿が出ていれば、糖尿病性腎症の始まりの可能性があります
池尻大橋せらクリニックでは、定期的な尿アルブミン検査を実施し、腎機能を早期に評価しています。
3. 合併症を調べる画像・機能検査
糖尿病は「血糖の病気」ではなく、「血管の病気」とも言われます。
高血糖が続くことで、**細い血管(細小血管障害)や太い血管(大血管障害)**がダメージを受けるため、次のような検査も行います。
(1) 眼底検査
- 網膜の血管を直接観察し、糖尿病網膜症を早期に発見
- 当院では眼科以外では珍しい眼底カメラによる撮影・評価を実施
(2) ABI(足関節上腕血圧比)
- 動脈硬化の進行を評価
- 足の血流が悪い「閉塞性動脈硬化症」を早期に検出
(3) 頸動脈エコー
- 脳梗塞リスクを調べるため、血管壁の厚さやプラークを確認
(4) ホルター心電図
- 24時間の心電図を記録し、不整脈や自律神経障害の影響を確認
池尻大橋せらクリニックでは、糖尿病の検査を血糖値だけに留めず、血管・神経・腎臓まで総合評価しています。
4. 糖尿病のスクリーニング(健診)と再検査の目安
健康診断では、空腹時血糖とHbA1cがチェックされることが多いです。
- 空腹時血糖が 110〜125mg/dL
- HbA1cが 5.7〜6.4%
の場合、糖尿病予備群(境界型) として定期フォローが推奨されます。
この段階で生活習慣を整えることで、多くの人が糖尿病発症を防げます。
5. 検査の頻度とフォローアップ
糖尿病が疑われた場合や治療中の方は、以下の頻度での検査が推奨されています。
- HbA1c:1〜3か月ごと
- 血糖値:通院時ごと(必要に応じて)
- 尿検査(アルブミン):年1〜2回
- 眼底検査:年1回
- ABI・頸動脈エコー:合併症リスクに応じて実施
6. 池尻大橋せらクリニックでの検査体制
当院では、糖尿病の診断から合併症評価までを一貫して行います。
- 血糖・HbA1c測定を即日実施
- 眼底・ABI・頸動脈エコーを院内完結
- 糖尿病専門医+運動療法プログラム+メディカルダイエットによる横断的治療
- MASLD(脂肪肝)・高血圧・脂質異常症との関連も同時に評価
患者さん一人ひとりに合わせた検査スケジュールを提案し、**「数値を下げる」だけでなく「血管を守る」**ことを重視しています。
まとめ
- 糖尿病の検査は、血糖・HbA1c・尿・合併症評価を組み合わせて行うことが重要。
- HbA1cは平均血糖を反映し、診断と経過観察に不可欠。
- 尿アルブミン・眼底検査・ABI・頸動脈エコーなどで血管や腎臓のリスクを早期発見。
- 池尻大橋せらクリニックでは、糖尿病を含む生活習慣病全体を総合的に診断・評価・改善しています。
参考文献
- 日本糖尿病学会. 『糖尿病診療ガイド2024-2025』
- American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes 2024. Diabetes Care.
- International Diabetes Federation. IDF Diabetes Atlas 10th Edition, 2023.
- 日本糖尿病学会. 糖尿病性腎症・網膜症の評価指針, 2023.
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