休診: 日曜 / 祝日

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糖尿病で手がしびれる? ― それは神経障害の初期サインかもしれません

はじめに

「最近、手がピリピリする」「物を落としやすくなった」――そんな症状が続いていませんか?

糖尿病では、血糖値の高い状態が続くことで神経が少しずつ傷ついていくことがあります。これを「糖尿病性神経障害」といい、手足のしびれや感覚の鈍さとして現れることが多いです。

本記事では、糖尿病による手のしびれの原因や仕組み、放置するリスク、そして早期の対処法について解説します。

1. 糖尿病性神経障害とは

糖尿病による高血糖状態が長く続くと、神経に栄養を送る血管がダメージを受け、神経細胞が少しずつ機能を失います。これが糖尿病性神経障害です。

糖尿病の三大合併症のひとつであり、もうひとつのサインである「しめじ」(神経障害・目・腎臓)の“し”に当たります。

糖尿病性神経障害にはいくつかのタイプがありますが、最も多いのが末梢神経障害です。手足の末端から始まり、少しずつ範囲が広がるのが特徴です。

2. 手に出るしびれの特徴

(1) ピリピリ・ジンジンとした感覚

電気が走るような軽い痛みや、手袋をしているような違和感が出ます。

(2) 感覚が鈍くなる

熱い・冷たい・痛いといった感覚が鈍り、火傷やけがに気づきにくくなることがあります。

(3) 夜間や安静時に悪化

夜寝ているときや手を使っていないときにしびれが強く出ることがあります。

(4) 足にも症状が出る

最初は足先に出て、徐々に手指にも広がる「手袋靴下型」の分布が典型的です。

3. 糖尿病以外のしびれとの違い

手のしびれには、頸椎症や手根管症候群など他の原因もあります。

糖尿病性の場合は、両手対称にゆっくり進行するのが特徴です。

  • 頸椎症:片側優位、首の動きで悪化

  • 手根管症候群:親指・人差し指・中指のしびれが中心

  • 糖尿病性:左右対称で、感覚鈍麻を伴う

4. 放置するとどうなるか

糖尿病性神経障害を放置すると、次のような問題が起こります。

  • 感覚低下によるけが・火傷・感染症

  • 手足の筋力低下による巧緻動作障害

  • 自律神経障害(立ちくらみ・便秘・発汗異常など)

手足の感覚が失われると、傷や潰瘍に気づかず悪化することもあり、重症例では壊疽や切断につながるリスクもあります。

5. 手のしびれを改善するには

(1) 血糖コントロールを整える

神経障害の進行を止める最も重要な方法は、血糖値を正常に近づけることです。

  • 食事:糖質のとりすぎを避け、野菜・タンパク質を意識

  • 運動:ウォーキングやストレッチを習慣化

  • 薬物治療:インスリンや内服薬を適切に使用

(2) 神経修復を助けるビタミンB群

ビタミンB1、B6、B12は神経の代謝を助け、しびれ改善に有効です。サプリよりも食事または医薬品(メチコバールなど)での補充が推奨されます。

(3) 痛みが強い場合の治療

しびれや痛みが強い場合は、

  • プレガバリン(リリカ)

  • デュロキセチン(サインバルタ)

     などの神経障害性疼痛治療薬を使用することもあります。

(4) 生活習慣全体の見直し

  • 禁煙(血流改善)

  • 節酒(神経毒性を防ぐ)

  • 睡眠の質を確保

6. 池尻大橋せらクリニックでの対応

当院では、糖尿病に伴うしびれや神経障害に対して、

  • 血糖コントロール+神経評価(振動覚・反射・感覚検査)

  • 眼底検査・ABI・頸動脈エコーで合併症を総合評価

  • 運動療法やメディカルダイエットで根本改善をサポート

といった、「神経を守りながら全身を整える治療」を行っています。

まとめ

  • 手のしびれは糖尿病性神経障害の初期サインである可能性がある。

  • 左右対称に出ることが多く、放置すると進行・感覚鈍麻へ。

  • 改善には血糖コントロール+ビタミン補充+生活習慣改善が不可欠。

  • 池尻大橋せらクリニックでは、糖尿病を中心とした生活習慣病を横断的に管理し、神経障害を早期に防ぐサポートを行っている。

参考文献

  1. 日本糖尿病学会. 『糖尿病診療ガイド2024-2025』

  2. Pop-Busui R, et al. Diabetic Neuropathy: A Position Statement by the American Diabetes Association. Diabetes Care. 2017.

  3. Tesfaye S, et al. Diabetic neuropathies: update on definitions, diagnostic criteria, estimation of severity, and treatments. Diabetes Care. 2010.