〜前十字靭帯損傷の症状、検査、治療について〜
「ジャンプの着地で膝をひねった」「方向転換で膝に激痛が走った」――
その後、腫れて歩けなくなってしまった場合、それは前十字靭帯(ACL)の損傷かもしれません。
前十字靭帯損傷は、若年層やスポーツ愛好家に多い重大な膝のケガです。放置してしまうと将来的な関節の変形につながる可能性があるため、早期の正確な診断と治療がとても大切です。
今回はACL損傷の原因、症状、検査、治療、そして最新の話題であるALL(前外側靭帯)についても紹介します。
【前十字靭帯(ACL)損傷とは?】
前十字靭帯は、膝関節の中央に位置し、大腿骨と脛骨をつなぐ重要な靭帯で、主に脛骨が前方へ滑るのを防ぐ役割を担っています。
ACL損傷は、以下のような場面で発症することが多いです:
- ジャンプ後の着地(バスケ・バレー)
- 急な方向転換(サッカー・ラグビー)
- 急停止動作や接触プレー
- 交通事故での強い膝打撲
膝の靭帯損傷全体の約45%を占め、半月板損傷や内側側副靭帯(MCL)損傷などの合併もよくみられます。
【主な症状】
- 膝の強い痛みと腫れ(特に受傷直後)
- 関節内出血により、数時間以内に膝がパンパンに腫れる
- 「ブツッ」という断裂音を感じることも
- 時間が経つと痛みは改善するが、膝の不安定感(膝崩れ)が残る
スポーツ復帰を目指す方にとって、この「膝崩れ」こそが大きな障壁になります。
【検査】
■ 徒手検査
ACLは脛骨の前方への動きを制御する靭帯であり、以下のテストで不安定性を確認します:
- 前方引き出しテスト
- Lachman(ラックマン)テスト:膝を軽く曲げた状態で脛骨を前方に引くと、「引き出される」「ストップがない」などの所見で陽性
- Jerkテスト:ACL損傷や前外側構造の損傷を評価するテストで、膝を伸展しながら内反・内旋を加えることで脛骨が瞬間的にずれる“ジャーク現象”が確認されれば陽性とされます
■ 画像検査
- レントゲン・エコー:骨折や他の疾患の除外(高原骨折や分裂骨片など)
- MRI検査(必要に応じて提携医療機関に紹介):ACLの損傷・断裂の確認、半月板や他の靭帯損傷の評価に有用
【最新の話題:ALL(前外側靭帯)とは?】
近年注目されているのが、ALL(Anterolateral Ligament:前外側靭帯)の存在です。
ALLはACLと連動して膝関節の回旋を安定させる靭帯と考えられており、ACL損傷とともにALLも損傷していると、膝のねじれ(回旋)に対する不安定性が強く残ることが分かってきました。
現在では、ACL再建時にALLを同時に補強・再建することで、再断裂や膝の不安定性のリスクを減らすことができるとする報告が増えており、競技レベルの高い選手ではALL再建も検討されることが増えています。
【治療】
■ 保存療法(手術しない場合)
- スポーツ復帰を希望しない方や高齢者向け
- リハビリで大腿四頭筋・ハムストリングスの筋力強化
- ジョギングなど軽度な運動に制限
- ただし、再度の膝崩れにより半月板損傷や関節軟骨の障害が進行するリスクあり
■ 手術療法(ACL再建術)
- 若年者・スポーツ選手・活動量が高い方に推奨
- 靭帯を人工的に再建(膝蓋腱や半腱様筋腱などを使用)
- リハビリを含めてスポーツ復帰には6〜12ヶ月程度かかる
- 再断裂率は約3〜10%とされており、術後のトレーニング継続が重要
放置した場合、受傷後5〜10年で40〜60%が変形性膝関節症に進行するとされており、長期的視点での治療選択が重要です。
【池尻大橋せらクリニックで行える検査・治療】
当クリニックでは、ACL損傷を含む膝関節外傷に対して、以下の対応を行っています。
■ 検査
- 徒手検査(Lachman・前方引き出しなど)
- エコー・レントゲン検査による他疾患除外
- MRIが必要な場合は、提携先へ迅速に紹介
■ 治療
- 保存療法の方には、筋力トレーニング中心の運動指導
- 手術が必要な場合は、適切なタイミングで専門医へ紹介
- スポーツ復帰に向けたリハビリ継続支援も可能
【まとめ】
前十字靭帯損傷は、若い世代やスポーツを楽しむ方にとって日常生活や将来の関節機能に大きく影響するケガです。
最近ではALL(前外側靭帯)の存在や再建法にも注目が集まり、より安全かつ効果的な再建手術が進化しています。
膝に違和感や不安定感がある方は、できるだけ早期に専門的な評価を受けることをおすすめします。
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